TPPでISDS条項導入に懸念の声

TPPで「ISDS条項」導入に懸念の声 米国企業に“伝家の宝刀”与えるようなもの
連載 森岡英樹の金融スクープ ZAKZAK 2013.11.13
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131113/ecn1311130728000-n1.htm
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加する日本を含む12カ国は、国家間のもめ事を仲裁する「紛争解決制度」を導入することで合意した。紛争解決制度は、貿易相手国が事前に決めた約束を不当に変えたと判断した場合、第三者に妥当性を判断してもらう制度である。

一方、紛争解決制度の影で、見落とされかねない重要な条項も合意された。企業と国のもめ事を仲裁する「ISDS条項」の導入である。一部で「毒素条項」とも揶揄されるISDS条項には数々の問題点が浮上しており、日本にとっても「TPP発動後の懸念材料になるのでは」と危惧する声が聞かれる。

ISDS条項は、外国企業(投資家)と国家の間の紛争を、国際的な仲裁機関に付託するための手続きなどを定めた規定で、多くの2国間投資協定やFTAの投資に関して設けられている。「投資受入国の国内裁判所に加え、国際仲介で紛争を解決できると定めれば、中立的な場で判断を受けられる」(外務省)という利点があるためだ。

日本もこれまでに締結した25本の投資協定のうち、フィリピンとのEPA(経済連携協定)を除く24本でISDS条項を採用している。しかし、「投資家に国内法よりも有利な権利を与えかねない」ことを懸念する声も根強い。実際、日系企業が投資受入国を相手に仲裁を提起したのは1件にとどまり、大半は米国企業による仲裁申し入れ。このため、TPPに伴い市場開放を求める米国企業に「伝家の宝刀」を与えるようなものとみる向きもある。

多くの協定で仲裁機関に指定されているのが、世界銀行グループで149カ国が参加する「投資紛争解決国際センター」。「世界銀行の総裁は常に米国人で、米国の影響が及びやすい」(外交筋)と指摘される。仲裁判断は投資家、投資受入国の双方が合意すれば公開されるが、不服があっても上訴できない。しかも地方自治体の規制も訴訟の対象になる。

そもそもISDS条項の利用が促進されたのは1980年代後半、北米自由貿易協定(NAFTA)の投資章を根拠にした、米エチル社のカナダ政府に対する仲裁提起が契機だった。2012年末までに514件の仲裁事例が報告されている。最も多くの仲裁付託を行ったのは米国企業で123件、次いでオランダ50件、英国30件、ドイツ27件と続く。一方、被提訴件数が多い国はアルゼンチンの52件を筆頭に、ベネズエラ34件、エクアドル23件、メキシコ21件と、中南米の国が中心となっている。

TPPを契機に日本に対し、米国企業がISDS条項を盾に提訴する動きが活発化する可能性もある。最も懸念されるのは、米国が参入障壁を主張する公的医療保険分野であろう。日本政府はこれまで締結した投資協定では、公的医療保険は投資分野の義務から除外される「ネガティブリスト」に含まれ、同条項の対象になっていないと説明している。だが、懸念が完全に払拭されたわけではない。
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