TPP協定交渉の概要 TPP政府対策本部 2015/05/01

TPP政府対策本部 / 内閣官房
2015/05/01 最新のTPP協定交渉の概要を掲載しました。
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppshiryo.html#gaiyo

(15)投資:投資家間の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続等について定める。
資料1 TPPの概要 TPP政府対策本部 2015/05/01
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/siryou/tpp_siryo1.pdf
tpp_20150501

資料2 TPPの概要 TPP政府対策本部 2015/05/01
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/siryou/tpp_siryo2.pdf
1.物品市場アクセス(☆*1)
より自由で公正な貿易を行える環境を整えるため、各国の譲許表(附属書として添付)に従って関税を撤廃等することを規定するとともに、内国民待遇※、輸入許可手続、輸出許可手続の透明性等、物品の貿易を行う上での基本的なルールについて規定されている。

物品市場アクセス交渉については、各国がオファーをし、それに対して改善リクエストを出す形で二国間協議が進められている。

繊維及び繊維製品の貿易については、個別の章又は節等を設け、原産地規則等を規定する方向で議論されている。

※ 内国民待遇
輸入産品に国内産品よりも不利でない待遇を与えなければならない。また、事業等に影響を及ぼす全ての措置について、他の締約国の事業者等に対して、自国の同種の事業者等に与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。

2.原産地規則
原産地規則では、輸入される産品について、関税上の特恵待遇の対象となるTPP域内の原産品として認められるための要件及び特恵待遇を受けるための証明手続等を定めている。また、原産地規則は、協定本文に規定される基本的ルール及び附属書に規定される個別品毎のルール(品目別規則:Product Specific Rules)等から構成される。

原産地規則により、実質的にTPP域外で生産された産品が、ある締約国を経由して別の締約国に輸入された際に、TPP特恵関税が不当に適用されることが防止される(迂回防止)。

また、TPPでは複数の締約国による付加価値・工程の足し上げを可能とする「累積ルール」が採用されている。生産工程の分業が進むと1ヶ国で原産地規則の基準を満たすことが困難となるため、広域FTAであるTPPにおいて、累積ルールが設けられれば、より多様な生産ネットワークに対してTPPの活用が可能となり、日本企業の最適な生産配分・立地戦略の実現が可能となる。

3.税関当局及び貿易円滑化
円滑な貿易を促進するためには、税関手続について予見可能性、一貫性及び透明性のある適用を確保することが必要とされる。

このため、TPPでは、物品の引取りのための簡易な税関手続、急送貨物のための迅速な税関手続、事前教示、予見可能であり、かつ、一貫性及び透明性のある方法で税関手続を適用すること等が規定されている。

また、締約国の法令の遵守の実現のため、情報の提供等により、締約国間で協力すること等について規定されている。

4.SPS(衛生植物検疫)
SPSは、Sanitary and Phytosanitary(衛生植物検疫)の略で、SPS措置とは、人、動物又は植物の生命又は健康を守るための措置のこと。SPS措置の目的を達成しつつ、科学的根拠に基づき、貿易に対する不当な障害をもたらさないためのルールを定めている。

WTO協定の附属書の1つとしてSPS協定が既にあり、TPPにおいても大枠としてはそれを踏まえたものとなっている。締約国は、WTO衛生植物検疫委員会の関連する指針並びに国際的な基準、指針及び勧告を考慮すること、更に透明性、関係国との技術的協議等について規定されている。

なお、WTO/SPS協定にはない規定は、説明責任の明確化等各国のSPS措置の透明性の向上に関するものが主であり、食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていない。

5.TBT(貿易の技術的障害)
安全や環境保全等の目的から製品の特性やその生産工程等について「規格」が定められる場合に、これが貿易の不必要な障害とならないよう、「強制規格」(法令で義務づけられるもの)及び「任意規格」(法令で義務づけられないもの)並びにこれらの規格を満たしているかを評価する「適合性評価手続」に関するルールを定めている。

WTO協定の附属書の1つとしてTBT協定が既にあり、TPPにおいても大枠としてはそれを踏まえたものとなっている。新規規格等の策定に際し、通報義務の範囲を拡大した点や、コメント受付期間を通常60日間とすることを明記した点等がTBT協定を越える内容となっている。

なお、食品の表示要件に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていない。

6.貿易救済
輸入急増による国内産業への重大な損害を防止するため、一時的に緊急措置(セーフガード措置)をとることができる旨を規定するとともに、その発動に当たり必要となる手続的要件について規定している。

7.政府調達(☆*1)
新興国の政府調達市場を開放することにより、新興国のインフラ市場等に我が国企業が参入する機会が増えるものと期待される。

既存のWTOの政府調達協定(GPA)に入っている日本、米国、カナダ、シンガポールの4ヶ国以外の国にもWTO政府調達協定と同等のルールを適用させ、同協定の適用対象範囲の水準と同等または同等以上の水準まで市場を開放することを求めるという構図になっている。TPP交渉参加国の中には、WTO政府調達協定の締約国ではなく、かつ、政府調達分野の市場開放を伴う経済連携協定を有していない国もあることから、特にこれらの国との関係においては我が国がTPP参加によって大きなメリットを享受し得る分野の1つとなっている。我が国はこの分野では開放が進んでいる国であり、攻めの分野となっている。

TPPにおいては、特定の調達機関が基準額以上の物品及びサービスを調達する際の規律を規定している。具体的には、公開入札を原則とすること、入札における内国民待遇及び無差別原則、調達の過程の公正性及び公平性等について規定している。

8.知的財産
知的財産が適切に保護されていなければ、安心して経済活動を行うことができず、利益を適正に上げることもできなくなり、新たな技術革新を生み出す意欲が削がれることにもなりかねない。我が国は高い水準の知的財産保護制度を有しており、アジア太平洋地域で同様に高水準の知的財産保護・権利行使のための制度を実現することの意義は非常に大きい。

TPPにおいては、特許権、商標権、意匠権、著作権、地理的表示(GI)等知的財産について幅広く規定するとともに、民事上及び刑事上の権利行使手続、国境措置、インターネット・サービス・プロバイダーに関する規律等について規定し、知的財産の保護・権利行使の環境整備を図っている。

また、医薬品については、新医薬品の開発促進と後発医薬品へのアクセスとのバランスを図りつつ、データ保護期間等について議論が行われている。

9.競争政策及び国有企業
カルテル等の反競争的行為が行われると、貿易・投資の自由化で得られる利益が害されることとなるため、競争法の執行を強化、拡充する必要がある。また、国有企業に対して政府による過度のサポートがあると民間企業との間で対等な競争条件が確保されなくなってしまう。

TPPの競争章は、競争法の整備と締約国間・競争当局間の協力等について定める競争政策の規律(セクションA)と、国有企業と民間企業の競争条件の平等を確保する国有企業の規律(セクションB)からなっている。

競争政策については、締約国による競争法の制定又は維持、競争法の執行における手続の公正な実施、締約国間・競争当局間の協力等を規定している。

国有企業の規律については、国有企業が物品・サービスの売買を行う際に他国の企業に対して無差別の待遇を与えることを締約国が確保すること、締約国が国有企業に補助金等の優遇措置を与えることで他国の貿易・投資に悪影響を与えてはならないこと等を規定している。

10.越境サービス(☆*1)
自由で公正なサービス産業のマーケットを構築することは、我が国サービス産業の海外展開を促進するとともに、途上国の国民の生活水準の向上にもつながるものである。

TPPにおいては、国境を越える取引、海外における消費の形態によるサービス提供、自然人の移動によるサービス提供※1に関し、内国民待遇、最恵国待遇※2、市場アクセス(数量制限等)等のルールについて規定されている(業務上の拠点を通じてのサービス提供※1については市場アクセスのみ規定)。

また、附属書において、原則全てのサービス分野を自由化に関する義務の対象とし、上記義務が適用されない措置や分野のみを列挙するネガティブリスト方式を採用している。これは、WTOのサービスの貿易に関する一般協定(GATS)が採用しているポジティブリスト方式(自由化を約束する分野のみを列挙)と比較して規制の現状が一目でわかるため透明性が高い。

※1:WTO/GATSにおいては、サービス貿易を4つの形態に分類している。具体例は以下の通り。

・ある国のサービス事業者が、自国に居ながらにして外国にいる顧客にサービスを提供する場
(越境取引=第1モード)(例:電話やインターネットを通じた外国コンサルタントの利用)
・ある国の人が、外国に行った際に現地のサービス事業者からサービスの提供を受ける場合(国外消費=第2モード)(例:外国における船舶・航空機などの修理)
・ある国のサービス事業者が、外国に支店・現地法人などの拠点を設置してサービスの提供を行う場合(拠点の設置=第3モード)(例:海外現地法人が提供する流通・運輸サービス)
・ある国のサービス事業者が、社員や専門家を外国に派遣して、外国にいる顧客にサービスを提供する場合(自然人の移動=第4モード)(例:招聘外国人アーティストによる娯楽サービス)

※2:最恵国待遇
締約国の事業者等に対し、他の締約国の同種の事業者等に与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。(=与えられた最も有利な待遇を全ての締約国の事業者に与えなければならない。)

11.ビジネス関係者の一時的な入国(☆*1)
ビジネス関係者の一時的な入国の許可、そのための要件、申請手続の迅速化及び透明性の向上等について規定されている。

また、附属書において、各締約国のビジネス関係者の一時的な入国に関する約束が規定されている。

12.金融サービス(☆*1)
金融分野の国境を越えるサービスの提供については、金融サービス分野に特有のルールを定めることが必要であることから、越境サービス章とは独立して章立てされている。

越境での金融サービスの提供等に関し、内国民待遇、最恵国待遇、市場アクセス制限の禁止、行政における透明性の確保といったWTO協定と同種の規律のほか、経営幹部等の国籍・居住要件の禁止、支払・清算システムへのアクセス許可等の貿易自由化の促進のための規律を定めている。

13.電気通信サービス
電気通信分野は、経済活動の一つの分野であるだけでなく他の経済活動の基礎となる伝送手段でもある。また、電気通信市場においては、独占が生じやすく公正な競争環境を促進する必要がある。

こういった特性から、電気通信章においては、電気通信インフラ及びサービスへの公平なアクセスの確保や電気通信市場における競争の促進等について規律している。

14.電子商取引
電子商取引市場は急成長しており、今後も市場の拡大が見込まれる分野であるとともに、中小企業が国際展開を図るに当たり有効に活用できるツールである。電子商取引には通常のモノの取引とは違った特有の取引形態があるため、同分野独自のルールを定めることによって、取引の円滑化を図る必要がある。とりわけ「デジタル保護主義」とも呼ばれる動きが顕在化し、取引が阻害されることがないようルールの明確化が必要である。

このため、デジタル・プロダクト(デジタル符号化され電子送信されるコンピュータ・プログラム等)の無差別待遇、国境を越える情報移転の自由の確保、サーバ等のコンピュータ関連設備の現地化要求の禁止等、電子商取引を阻害するような過剰な規制が導入されないよう各種規律が定められている。また、電子商取引利用者の個人情報の保護、オンライン消費者の保護に関する規律が定められるなど、消費者が電子商取引を安心して利用できる環境の整備も図られている。

15.投資(☆*1)
投資家保護に係るルール等を定めるとともに、なるべく自由に投資活動ができるようにすることにより、TPP域内におけるグローバルバリューチェーンの構築がより一層促されることとなる。

TPPにおいては、投資財産の設立段階及び設立後の内国民待遇及び最恵国待遇、正当な補償等を伴わない収用の禁止等を規定している。

また、締約国がこれらの義務に違反した場合、その違反行為により損害を被った投資家は、紛争を当該締約国を相手とする紛争解決手続(ISDS)に持ち込むことができることが規定されている。ISDSは、投資家による予見可能性を確保することで投資を促進すること、締約国による協定上の義務の履行を担保すること等の観点から、これまで我が国を含む各国が締結した多くの投資関連協定においてこの条項が盛り込まれている。

なお、保健、安全及び環境保護を含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が挿入されている。

16.環境
貿易政策と環境政策とのバランスの確保、高い水準の環境保護及び環境法令の効果的な執行の促進、貿易に関連する環境問題に対処するための各締約国の能力の強化を図るためのルールを確立させようという、21世紀型の分野である。

環境については、WTOの世界とは別に様々な多数国間取極(MEA)が存在し、それも伝統的な自然環境に関するものから、近年の新しい分野である生物多様性など多様な条約があり、それらとTPPの関係を規定している。また、過剰漁獲を防ぎ持続的な漁業の発展に資するルール(漁業補助金等)、野生動植物の保全に関するルール等を規定している。

17.労働
貿易や投資の促進のために労働基準を緩和することになれば、不当な競争によって各締約国における事業コストが相対的に上昇することになりかねない。

TPPにおいては、1998年に採択された国際労働機関(ILO)宣言で述べられている権利(結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認、強制労働の撤廃、児童労働の実効的な廃止、雇用・職業についての差別の撤廃)を自国の法律等で採用・維持することを規定し、貿易又は投資に影響を及ぼす態様で自国の法律の免除等を行ってはならないこと等を規定している。

18.中小企業
TPPは中小企業の国際展開にも大いに貢献するツールであることから、中小企業がTPPの恩恵を十分に享受できるようなサポート体制を構築する必要がある。

中小企業がTPPを活用するために必要な情報の提供方法や、協定発効後にTPPが中小企業にとって有効に機能しているかをレビューする仕組みの創設等について規定している。

*1:☆は、ルールと市場アクセス双方に関わる分野。
*2:越境サービス貿易及び投資の市場アクセスは、非適合措置(NCM:協定の自由化に関する義務が適用されない締約国の措置及び分野)で議論。越境サービス貿易及び投資について自由化に関する義務が適用されない措置や分野を列挙するネガティブリスト方式を採用し、国ごとに作成。
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