避難システム「時間稼ぎ程度」 「川内」司法判断に専門家ら異議

避難システム「時間稼ぎ程度」 「川内」司法判断に専門家ら異議
2015年5月5日 朝刊 東京新聞 TOKYO Web
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015050502000131.html

「決定の中で、いいように利用された」。九州電力川内(せんだい)原発の再稼働差し止め要求を却下した先月の鹿児島地裁の決定。原発の安全性や避難計画の実効性を認め、火山の巨大噴火の可能性は低いと認定しているが、本当にその通りなのか。裁判所の判断の材料となった関係者からは大きく異なる証言が得られた。 (小倉貞俊、荒井六貴)

鹿児島県は原発事故時、まず原発五キロ圏の住民を避難させた後、外側の住民を段階的に避難させる方針。決定は福島原発事故のような大混乱、大渋滞を回避できると期待するが、実は県自体、四割の住民が指示を待たず逃げ始めると想定している。

原発から約十二キロ、薩摩川内市の山之口自治会長・川畑清明さん(58)は「五キロ圏の避難を待てば、自分たちが被ばくしかねない。すぐ避難を始める人も大勢いるはず。計画は現実的ではない」とみる。

鹿児島地裁は「避難計画に実効性あり」と判断した根拠の一つに、県が導入した避難先の調整システムを挙げた。しかし、県防災担当者にシステムの能力を問うと「コンピューターで自動的に調整できるわけではありません。多少の時間節約にはなると思いますが…」との答えが返ってきた。

風向きを入力すれば、避難所候補リストから放射能が少なそうな方角の候補を絞り込んではくれるが、それ以上のものではないとのことだった。

決定は、県が入院患者らの避難に必要な台数のバスを確保する方針であることを挙げ、避難が順調に進むかのように書いているが、バスの運転手の被ばく管理をどうするのかなど課題は山積し、バス確保のめどすら立っていない。

川畑さんも「被ばくの恐れがある中で、運転手の理解を得られるのか」と疑問を口にした。

もう一つの大きな争点が火山の巨大噴火のリスク。決定は、専門家たちが九電の火山監視能力や対応策の有用性を認め、噴火のリスクも小さいと認めているかのように書いているが、複数の専門家から厳しい声が出ている。

「南九州で巨大噴火が起こらない保証はない。決定の中で、自分もいいように利用された。ひどい決定文だ」。日本火山学会理事で東大地震研究所の中田節也教授はこう憤る。

決定は、二〇一三年十月に開かれた旧原子力安全基盤機構(原子力規制委員会に統合)の会合で、九電の火山対応について「出席者から特に異論が出なかった」ことを根拠に、九電に十分な監視能力ありと認定している。

この会合に出席していた中田教授は「事務方から説明を受けただけ。問題があると思っていたが、意見を求められず、指摘する機会もなかった。説明だけなのに、同意があったように書かれている。曲解され腹立たしい」と話した。

一四年八月から規制委の会合で、火山監視の議論が始まったが、専門家からは噴火予知は非常に難しく、特に巨大噴火は観測データそのものがないなどの指摘が相次いだ。だが、地裁はなぜかこうした指摘をくみ取らなかった。

決定が巨大噴火の可能性を認識する火山学者は少数派としている点について、火山噴火予知連絡会長の藤井敏嗣(としつぐ)・東大名誉教授は「事実誤認で、科学的ではない」と断じこう現状を語った。

「ほとんどの学者が大噴火はあると思っている。十年先なのか千年先なのか分からないが、危険がないように書かれているのはおかしい。噴火数日前に異変をとらえ、人を避難させられるかもしれないが、数年前から(熱い核燃料を冷まし、搬送容器に入れられるよう)前兆をとらえられるか、見通せるわけがない」
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